高速バイポーラ電源の特長と活用

バイポーラ電源とは?

バイポーラ電源とは?

負荷に電圧を印加したとき、流れる電流はその電圧や負荷のインピーダンスに依存します。
負荷に電圧を加え、その時の電流をプロットしながら変化させていくと、そのプロットは、図1のような軌跡になります。この軌跡は、負荷線(ロードライン)と呼ばれます。

図1:抵抗(R)負荷の場合(EとIの位相差0°)

抵抗(R)負荷の時に直線になる負荷線は、インダクタ(L)負荷では、図2のような円形になります。
縦軸と横軸で区切られたグラフの4つの領域を「象限」と呼びます。
抵抗の場合、負荷線は1象限( I ) と3象限(III)にのみ存在し、2象限(II)と4象限(IV)にはありません。
しかし、負荷がインダクタやコンデンサの場合には、負荷線は1象限から4象限まですべてに存在します。

図2:インダクタ(L)負荷の場合(EとIの位相差90°)

バイポーラ電源とは、実は1象限から4象限の全領域で動作できる電源のことです。
それに対して、1象限と3象限でのみ動作する電源は、「ユニポーラ」と呼べるでしょう。
一般的な直流電源は、「ユニポーラ」動作です。図2の負荷線の説明でおわかりのように、インダクタやコンデンサを負荷にした場合は、負荷線が2象限や4象限にも存在するため、バイポーラ電源でなければうまく駆動できません。

求められる高性能なバイポーラ電源

求められる高性能なバイポーラ電源

リアクタンス性の負荷を駆動するためには、バイポーラ電源が必要です。
しかし、用途によっては、より高い性能が求められることがあります。
では、どんなときに、どんな性能が必要とされているでしょうか。

コンデンサのリップル電流試験でこんな要求 !!

広帯域

スイッチング電源は、スイッチング周波数が高周波化する傾向にあります。
それにともない、出力を平滑化するコンデンサが処理するリップル電流も高周波になっています。

リップル試験で高周波電流を発生させるためのバイポーラ電源は、より広帯域であることが求められます。

圧電素子の駆動試験でこんな要求 !!

高電圧、低出力インピーダンス

圧電アクチュエータや超音波モータなどの圧電素子の駆動には、100Vp 前後の高電圧が必要な場合があります。また、圧電素子をすばやく動作させるには、高速な立ち上がり信号が必要です。
圧電素子のようなコンデンサ型の負荷の場合、負荷と電源の出力インピーダンスが、ローパスフィルタを形成します。
このローパスフィルタは、パルスの立ち上がりを鈍らせる作用をします。(図A) 一般的な広帯域の増幅器は、出力インピーダンスが50Ω (ないしはそれ以上) なので、この作用がより顕著になります。

図A:立ち上がりが鈍った波形

圧電素子を駆動するためのバイポーラ電源は、高電圧出力低出力インピーダンスが求められます。

デバイスや電子材料評価でこんな要求 !!

良好な波形応答、速い立ち上がり

電子デバイスや素材の研究では、高電圧パルス波を印加する要望があります。信号発生器から出力されるパルス波形を増幅して印加する場合、駆動するアンプの入力と出力波形が相似形でなければなりません(図B)。
波形応答(ステップレスポンス)が良好でない場合は、パルス波形にオーバーシュートやリンギング(振動)が発生します(図C)。
この波形の乱れは、電源の周波数帯域と位相特性によって生じます。

図B:良好な応答波形
図C:オーバーシュートのある応答波形

さらに、高速な信号印加が求められると、アンプのスルーレートが十分でないと、やはり入力波形と出力波形が相似形になりません。これをパルスで見ると、パルス幅に対してパルスの立ち上がり時間が無視できないほどになった場合、矩形波に見えていたパルスは、台形波、さらに三角波へと変形してしまいます(図D, E, F)。

図D:矩形波
図E:台形波に変形
図F:三角波に変形

リアクタンス性のデバイスを駆動するためのバイポーラ電源は、良好な波形応答と高速なスルーレートが求められます。

高速バイポーラ電源

高速バイポーラ電源

直流も交流もこなせるのは、エヌエフの高速バイポーラ電源です。

  • 高速・広帯域・高出力電圧と増幅器に求められる性能を装備
  • 波形応答が良好
  • 出力インピーダンスがほぼゼロオームで、出力電力を余すことなく駆動対象に印加(インピーダンスマッチング不要

ラインナップのなかから最適の一台を選ぶことができます。

型 名 HSA42011 HSA42012 HSA42014
周波数帯域 DC~1MHz
最大出力電圧 150Vp-p
最大出力電流 3Ap-p 6Ap-p 12Ap-p
スルーレート(typ.) 475V/μs
出力インピーダンス [0.19 + 0.0155√f × (1+j)] Ω以下(typ.) [0.19 + 0.00803√f × (1+j)] Ω以下(typ.) [0.19 + 0.00460√f × (1+j)] Ω以下(typ.)
型 名 HSA4051 HSA4052 HSA4101 BA4825
周波数帯域 DC~500kHz DC~10MHz DC~2MHz
最大出力電圧 300Vp-p 142Vp-p 300Vp-p
最大出力電流 2.83Ap-p 5.66Ap-p 2.8Ap-p 0.5Arms
スルーレート(typ.) 450V/μs 5000V/μs 500V/μs
出力インピーダンス 1Ω+3.2μH 以下 0.5Ω+1.6μH 以下 1.5Ω+0.5μH (typ.) 0.5Ω+15μH 以下 (typ.)

高速バイポーラ電源の活用例

バイポーラ電源は、リアクタンス性の負荷を駆動するのに最適です。リアクタンス性負荷とその用途は、次のようなものが挙げられます。

コンデンサ

コイル・トランス

  • 実駆動時のインダクタンス、リーケージインダクタンス測定用電源

圧電素子

磁性体

その他

  • モバイルデバイスのノイズに起因する誤動作検証用電源
  • 生体分子計測における誘電泳動の実験
  • 擬似AE源駆動用電源

活用例

コンデンサの高周波リップル試験用電源

コンデンサの高周波リップル試験用電源

コンデンサの高周波リップル電流による発熱の試験です。
この試験においては、安定したリップル電流を供給できる電源を用いて、コンデンサを発熱させることが重要です。そのためには、電源が広帯域であることはもちろん、コンデンサ駆動に強い完全4象限動作であること、低インピーダンス駆動ができることがポイントとなります。

測定ブロック図

波形データ

高電圧印加時のインピーダンス測定用電源

高電圧印加時のインピーダンス測定用電源

圧電体のインピーダンス測定の例です。
圧電体は駆動条件(電圧・周波数)によって動作が変化します。したがって、実際の駆動状態と同じ電圧で駆動できる電源を用いて評価することが重要です。そのためには、電源の出力電圧を十分にとれることはもちろん、圧電体駆動に強い完全4象限動作であること、低インピーダンスであることがポイントとなります。

測定ブロック図

実測データ

アモルファスのB-Hカーブ測定用電源

アモルファスのB-Hカーブ測定用電源

磁性体B-Hカーブの測定例です。
磁性体は高周波化が進んでおり、実際の使用状態での磁化特性の測定が求められています。したがって、広い周波数にわたって強力で安定した磁束を得られる電源を用いた評価が必要となります。そのためには、電源が広帯域・高電圧であることはもちろん、インダクタンス駆動に強い完全4象限動作であること、定電圧出力ができることがポイントとなります。

測定ブロック図

ワンポイント情報

Tips:インピーダンスマッチングは、いつでも必要か?

Tips:インピーダンスマッチングは、いつでも必要か??

普通の広帯域の増幅器では出力インピーダンスが50Ωとなっているので、電力伝送路でインピーダンスマッチングが必要になると思われがちです。しかし、実際には信号の波長に対してケーブルの長さが無視できる場合であれば、インピーダンスマッチングは不要です。

1MHzで考えると、その波長は空気中で300m、同軸ケーブル内では約200mです。通常使われる1m程度の同軸ケーブルでは、十分無視できると考えられる範囲です。(図H)

図H 一波長200mの正弦波に対する1mの大きさ

インピーダンスが存在するとそこで電力が消費されますので、不要なインピーダンスマッチングは、増幅器の出力電力を無駄に浪費することになります。 (図J)

図J インピーダンスが存在する場合の電力の消費

Tips:より大きな電圧を供給するには?[BTL接続]

Tips:より大きな電圧を供給するには??[BTL接続]

フローティングされた負荷 (グラウンドから絶縁されている負荷) に対して、HSAシリーズまたはBA4825を2台使用することで、出力電圧と電力を2倍にすることができます。

No.1の出力をNo.2の入力に加え、No.2No.1と逆相で運転します。負荷は各々の出力のホット側からとります。

上記はHSA4051/HSA4052の場合の接続例

バイポーラ電源の信号源に — マルチファンクションジェネレータ WAVE FACTORY

試験や実験内容に合わせた様々な出力波形を簡単に作成。電子部品・デバイスの駆動試験や評価に、バイポーラ電源との組み合わせに最適な信号発生器です。

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