FAQ - AE計測装置
機能・性能
Q: センサの選び方は?
A: まず、測定物の材料によってAE波が効率よく伝搬する周波数が異なるので、その周波数に共振する特性のセンサを使用してください。次に周囲ノイズや温度、取り付け方法などの測定環境を考慮して選定してください。
Tips
AE波は、発生点では非常に広帯域の周波数成分をもったインパルス状の信号と考えられます。信号は媒体(材料)を伝搬していく過程で減衰していきますが、伝搬の特性は材料や形状によって大きく異なります。例えば金属では、比較的高い周波数でもあまり減衰しませんが、岩盤では急速に減衰します。したがって、AEセンサは、金属では1MHz以下のものが使えますが、岩石ではせいぜい数百kHzが限界になります。
Q: センサの周波数範囲は?
A: 約50kHz~数MHzの範囲です。特定の共振点をもつタイプと、広帯域の周波数特性をもつタイプのセンサがあります。さらに低い周波数帯域を利用する場合、一般に加速度センサを用い、センサの平坦な周波数帯域ではなくセンサの共振点で検出します。
Q: センサケーブルは長くできますか?
A: 可能です。ただし、信号が減衰し、かつ雑音を拾いやすくなることから、必要な信号レベルを確保できるかで長さを決める必要があります。
Tips
付属の標準ケーブルを使うと、センサ出力からケーブル端で、信号は約1/2になります(ケーブル長さ1m、静電容量約100pF/m、センサ出力インピーダンス100pFとした場合)。さらにケーブルを10mにすると信号は約1/10になりますから、1mのときに比べて1/5に減衰することになります。AE計測システムで一番雑音を拾いやすいのはセンサとプリアンプ間なので、ケーブルを長くすることは計測上不利です。
比較的大きな信号が出てくる用途ではケーブルが多少長くても検出できますが、微少な信号を扱う場合には不向きです。具体的には、異物検出やタッチセンサへの応用などは前者であり、セラミックスの微視割れの測定のような用途は後者になります。
Q: プリアンプ内蔵センサのメリットは?
A: SN比(信号対雑音比)が改善され、信号ケーブルを長くすることができます。センサのハウジングにプリアンプを入れると、センサとプリアンプ間のケーブルが極端に短くなり、センサケーブルの長さの質問項で述べたようなデメリットが解消します。ただし、センサ自身が高価になる、使用温度範囲が内蔵プリアンプの存在によって制約を受ける、プリアンプにフィルタを入れるような複雑な構成ができない、などのデメリットがあります。
使用環境
Q: センサはどのくらいの高温まで使えますか?
A: 一般的なAEセンサの使用温度範囲は、-20~80℃です。高温用センサでは200℃も可能ですが、一般的なセンサとウェーブガイドを併用することも有効です。
Tips
一般的なAEセンサの使用温度範囲は、AEセンサに使用している接着剤や付属ケーブルによって決められています。高温用AEセンサは、接着剤を使わない構造や特殊なケーブルを直出しにするなどの工夫をして200℃まで使用できるようにしたものです。さらに高温環境での測定には、ウェーブガイドの使用をお奨めします。ただし、ウェーブガイドを使用すると1/3~1/10程度信号が減衰します。
Q: 高圧の環境下で使えるセンサはありますか?
A: 150kg/cm2くらいまでのセンサが特注にて製作可能です。当社営業までお問い合わせください。
Q: 放射線下で使えるセンサはありますか?
A: 耐放射線用途のセンサは用意しておりません。AEセンサは本体の構造が単純なので、放射線によって誤動作したり、センサ本体が壊れたりする可能性は低いですが、ケーブルの劣化などセンサ以外の部分が問題になります。
Q: 極低温で使えるセンサはありますか?
A: 液体窒素(-196℃)中で使用できる極低温用センサAE-901DL-A/AE-901DL-Bがあります。
Q: 真空中で使えるセンサはありますか?
A: 原理的にAEセンサは真空中でも動作します。ただし真空中では、センサ自身からいわゆるゴミが出る可能性があります。厳密な真空が要求される用途では注意が必要です。
Q: 防水形と防油形のセンサの違いは?
A: どちらも水中に浸けることができる点は同じですが、防油形では油によって劣化しないケーブルを使用しています。防油形のセンサは水中で使用できますが、防水形は油の中では使えません。
構造・寸法・取り付け
Q: センサの最小サイズは?
A: 当社のセンサで一番小さいのはAE-903Nで、直径3mm、高さ3mmです。このセンサは、ケーブルも他のセンサより細くて柔らかいものを使っており、小さくて軽い被測定物でも容易に接着できます。
Q: センサの取り付け時に音響カプラは必要?
A: センサを被測定物に機械的に押しつけるときは、カプラとしてグリスなどが必要です。一般に被測定物もセンサも固体です。両者を強い力で押しつけても、ミクロ的には隙間だらけで、弾性波は固体→気体→固体と通過するときにほとんど反射して信号検出ができません。グリスを間に塗布すれば、中間の気体が液体またはゲル状の固体に置き換えられるので、反射は減ります。
Q: センサはどんな方法で取り付けますか?
A: グリスを介して圧接するか、接着剤で取り付けます。一番簡単な方法は、グリスを介して圧接することです。細長い板状の試料の場合には、その上からビニルテープを巻き付けます。接着剤もよく使用されます。
Q: センサを固定する接着剤の推奨品は?
A: 一時的に仮付けする場合は、エレクトロンワックスのような感熱接着剤やホットメルトが便利です。半永久的に接着をしたい場合は、エポキシ系の2液混合形の接着剤を使用します。また、ある程度の強度をもち、かつ測定終了後にセンサを取り外したい場合は、金属一体形のセンサを、瞬間接着剤で取り付けます。取り外しには、アセトン等の溶剤を使用しますので、金属一体形でない通常のセンサに溶剤を使うとセンサ自身の接着がはがれ破損します。
Tips
感熱接着剤は、ライタやはんだごてで溶かし、固まらないうちにすばやく貼り付けます。取り外す場合は同様に加熱し、溶かします。加熱しすぎるとセンサを破損することがありますので、注意が必要です。コンクリートの場合には、日曜大工店等で売っているホットメルトを使うこともできますが、ホットメルトは暑くなると感度が下がります。感熱接着剤やホットメルトは、簡単に取り外せますが、これは逆にはずれやすいことでもあります。
Q: センサを測定対象に接着剤で取り付けた場合、信号は接着剤により減衰しますか?
A: 接着剤が薄ければ影響は少ないと考えられます。逆に接着剤を使わずに固定する場合にセンサと測定対象の密着度が低下し、信号が減衰します 。そのため音響カプラとしてグリスなどを使用します。これらの現象は、センサや測定対象の種類、信号の周波数や大きさによって変わりますので、実際の測定環境でご確認いただく必要があります。
Q: センサの寸法精度は?
A: ±0.3mm以内です。寸法が1~4mmでは±0.1mm以内、4~16mmでは±0.2mm以内、16~63mmでは±0.3mm以内です。
Q: センサの耐衝撃性は?
A: 大きさや形状にもよりますが、約100g(»980m/s2)の衝撃まで耐えられます。
Q: センサのケース材質は?
A: アルミまたはステンレスです。通常、ケースは測定器のアースに接続されていますが、絶縁形のセンサも特注にて製作可能です。詳細は当社営業にお問い合わせください。特に屋外での測定や、プリアンプのケーブルを長く延ばす場合には、絶縁形のAEセンサを使用することをお奨めします。
Q: センサの付属ケーブルと普通の同軸ケーブルの違いは?
A: センサの付属ケーブルは、ローノイズケーブルです。普通の同軸ケーブルは、振動を与えると雑音を発生します(トリボ効果)。これを防止したのがローノイズケーブルで、シールド線と絶縁材との間にカーボンを入れてあります。ローノイズケーブルを使用しても、ケーブルは固定して振動しないようにしてください。
AE法一般
Q: どんな場合にAE(Acoustic Emission)法が有効ですか?
A: 基本的には、音響放出(AE)を伴った物理現象全般に使えます。金属材料、複合材料、セラミックス、コンクリート、岩石、コンクリート構造物、地震、空気リーク検出、コロナ放電などがその測定対象例です。
Tips
すべての物理現象は音響を伴います。例えば、金属材料の結晶格子が一つずれるようなミクロの変化でもAEが発生します。しかし、AEは常に観測できるかというと、必ずしもそうではありません。うまく観測できない典型的な要因が二つあります。
- 発生源からセンサまでの間にAE波が減衰してしまう。
特に高い周波数は早く減衰します。岩石やコンクリート等、比較的広い距離範囲の測定に低い周波数が用いられるのはこのためです。AE発生源のすぐ近くにセンサを置くことができれば、高周波検出の可能性は高くなります。 - センサ周囲のバックグランド雑音が大きい。
雑音には電気的雑音とセンサの入力に振動として入る機械的雑音があり、特に機械的雑音は低周波領域のAEで問題になります。
AE法が使えるかどうかは上記の要因二つにかかっています。適正な測定のためには、周波数特性の異なる複数のセンサで測定し、AE波に対する感度が高く、バックグラウンド雑音に対する感度が低い最適周波数を見つけることです。
Q: AE波はどれくらい遠くまで届きますか?
A: 金属の場合で数m~数十m、岩盤の場合は1m程度です。
Q: AEの利用周波数の違いによるメリット、デメリットは何ですか?
A: 以下の表をご覧ください。なお、AE発生源の位置評定時は、高い周波数の方が分解能を高くできます。
伝搬減衰量 | 周囲の雑音の影響 | 用途 | |
---|---|---|---|
高い周波数 | 大きい | 比較的少ない。車の通過音や雨風の音を信号と分離できる | 堅くて小形のもの 例:金属、セラミックス等 |
低い周波数 | 小さい | 比較的大きい。車の通過音や雨風の音を信号と分離しにくい | 堅くない大形のもの 例:岩石、コンクリート |
赤字:メリット
Q: AE波は液体や気体中を伝搬しますか?
A: 液体中では大幅に減衰し、気体中ではほとんど検出できません。AEの定義は固体中を伝わる弾性波です。金属で発生したAEを液体を介しての検出は可能ですが、金属と液体との境界面で大多数の波は反射して、信号はかなり小さくなります。気体の場合はほとんどすべての波が反射するので、事実上検出できません。
Q: AEセンサはどんな物理量に応答しているのですか?
A: AEセンサの圧電素子の応答は、共振点より低い周波数では加速度が、共振点では速度が、共振点以上では変位がそれぞれ支配的になります。共振点を利用するタイプのAEセンサでは、主に速度に応答しているといえます。
Q: AEセンサと加速度センサとの違いは?
A: 加速度センサは共振周波数より十分低い周波数範囲で使用します。AEセンサはかなり高い共振周波数を持ち、これを積極的に使います。どちらも圧電素子(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)を使っています。加速度センサは、加速度に対して平坦な周波数特性を得るため、PZT素子の上に重りを乗せてダンピングしています。一方、AEセンサは重りを乗せず、そのため共振周波数はかなり高くなります。
Q: AE信号を測定した結果で、異常かどうかなどの診断が可能ですか?
A: 適正な診断には様々な検証が必要です。通常AE測定をすると、様々な波形が観測されます。例えば異常時の測定をした場合でも、同時に正常な状態の信号も複数同時に観測されます。例えば、正常時と異常時のAE信号を比較して、その差分が検出したい異常発生時のAE信号であるかの検証が必要となります。
その他
Q: センサのケースと底のセラミック部分が分離してしまいました。修理はできますか?
A: 修理できません。AEセンサの構造は非常に繊細なので、破損した場合元の特性に戻すことはできません。
Q: 一度使用したセンサを取り外して再利用できますか?
A: 基本的にAEセンサは消耗品とお考えください。ホルダ使用や熱可塑性の接着剤の場合は、取り外しての再利用も可能です。一方、エポキシ系の接着剤使用の場合は再利用困難です。