電源機器取り扱いの基本

電源機器は、正しい接続や適切な環境を維持しないと、性能が得られないばかりか、危険を伴うことも。配線時の注意点、設置時に配慮すべきこと等を紹介します。

電源機器の配線について

電源機器の配線について

電源機器の配線時やケーブルを選ぶ際の注意点などをご紹介。

電源機器をご使用の際には、商用電源および負荷との配線も重要なポイントです。ケーブルの選択を間違うと十分に性能を発揮できないだけでなく、トラブルの要因になってしまうこともあります。

1. 配線によるトラブル

配線に起因するトラブルの例(出力側)

配線に起因するトラブルの例(出力側)
  • 端子台とケーブルの接続不良に起因する接触抵抗によって、接続部が発熱する。
  • ケーブルの許容電流値不足により、ケーブルが発熱する。
  • 使用ケーブルが細く、長いため抵抗成分が増加し、ケーブルの抵抗×電流による電圧降下が発生。
  • 長いケーブルがアンテナの役割を果たし、外乱ノイズによる影響を受けやすくなる。

電源機器の入力側においても同様となります。

2. ケーブルの選び方

配線するケーブルを選定する際には、太く短くが理想的です。しかしながら、ケーブルが太すぎて扱いづらくなったり、事情によっては電源を負荷の近くに置けずケーブルを短くできない場合があります。設置環境に合わせて適切なケーブルを選択しましょう。

ケーブルの特性:

  • 太さや種類により、ケーブルを安全に使用できる電流値(許容電流値)が決められている。
  • 2本以上をまとめたケーブルの場合、芯数(本数)が増えるに従い許容電流値が減少する。

ケーブル選定の基本的手順

  • 電源機器の定格出力に必要な電流値を確認する。
  • 配線に必要なケーブルの数(三相、単相など)および長さ(負荷や配電盤との距離による)を決める。
  • ケーブルの芯数(本数)、許容電流値、ケーブル長による電圧降下を踏まえ、太さを決定する。
ケーブル選定例:
条件:
  • ケーブル芯数:2芯
  • 電流値:20A
  • ケーブル長:3m
  • 電圧降下:0.5V以内
選定手順:
  • 芯数2芯、電流値20Aの条件から、許容電流値表[ 表1 ]を参照すると、2mm2以上のケーブルが対応します。
  • さらにケーブル長3mによる電圧降下[ 図1 ]を考慮すると、5.5mm2のケーブルを使用するのがおすすめです。

*実際の選定時には、必ずメーカより提供されている仕様をご確認ください。

2芯ビニルキャブタイヤケーブルの許容電流値
表1:2芯ビニルキャブタイヤケーブルの許容電流値

JIS C 3312およびJIS C 3307より抜粋

ケーブル長による電圧降下
図1 ケーブル長による電圧降下

3. 当社電源製品の入出力端子

当社製品の入出力端子についてご紹介します。

ねじ止め端子台

ケーブル先端の圧着端子をねじ止めして接続。

ねじ止め端子台

押し締め端子台(フェニックスコンタクト社製)

被覆を剥いだケーブルを端子台へ挿入して接続。

押し締め端子台

インレット

一般的な電源プラグで接続。

インレット
EC1000SA

4. 電源入力の配線と接地

電源機器を安全にご使用いただくため、正しい配線と接地が重要です。

配線する前に

電源入力の配線を行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • コンセントや配電盤の供給電力が電源機器の入力定格を満たしていることを確認する。
  • 電源機器本体のメインスイッチがオフであることを確認する。
  • 配電盤に接続する場合は、配線を行う前に配電盤のブレーカをオフにする。

配電盤への接続は製品添付の取扱説明書に従い、必ず専門の技術者が行ってください。

保護接地端子について

保護接地端子は製品の安全性を確保するため、保護接地と接続しなければならない端子です。
入力配線を行う際は必ず保護接地端子を最初に接続してください。

保護接地端子の配置例
【単相200V入力の機器】
保護接地端子の配置例(単相200V入力の機器)
【三相200V入力の機器】
保護接地端子の配置例(三相200V入力の機器)
保護接地用ケーブルについて

保護接地用ケーブルは、電源の消費電流を考慮した太さのケーブルをご用意ください。 

コンセントの接地について(日本国内仕様の電源ケーブルの場合)

コンセントに接続可能な機器も保護接地を行う必要があります。電源機器接続の際は、必ず付属の電源ケーブル(2極、接地極付き)をご使用ください。アースコード付 変換アダプタを使用する場合は、変換アダプタのアースコードをコンセントの接地端子に必ず接続してください。

単相100V インレットの機器
コンセントの接地について
アースコード付 変換アダプタでの接続
コンセントの接地について

5. 配線とノイズ

電源ケーブルを配線する際は、ケーブルの配線状態やレイアウトにも気を配りましょう。ノイズによる影響が生じる場合があります。

配線状態について

電源ケーブルの配線状態を考慮するだけでも、ノイズの影響を未然に防ぐことができます。

配線状態について

電源ケーブルはノイズ源となりやすいため、可能な限り接続するケーブルを端子台の直近まで、ツイスト状態で配線することをお勧めします。

*打ち消し効果が働くのはケーブルが「ケーブルの+/-」や「三相ケーブルのL1/L2/L3」など一対もしくは一揃いとなる場合(平衡となる場合)のみです。

ケーブル配線時のレイアウトについて

電源ケーブルとセンシング線など、用途が異なるケーブルを配線する場合には、信号レベルの小さいケーブル側が誘導ノイズの影響を受けやすくなるため、配線レイアウトにも注意をしましょう。

配線レイアウトで注意すべきこと
  • 配線系統の異なるケーブルはなるべく離してツイスト配線する(前述)。
  • 扱う電力が大きければ大きいほど、各ケーブル間の距離を空ける。
ケーブルレイアウト例
【ノイズを考慮した例】
ノイズを考慮した例
  • ケーブル間に十分な距離がある
  • 電源と信号のケーブルが平行でない
【ノイズが考慮されていない例】
ノイズが考慮されていない例
  • ケーブルを密着して配線している
  • 電源と信号のケーブルを平行配線

設置環境とメンテナンス

設置環境とメンテナンス

電源機器を設置する際の注意点や当社電源のお手入れ方法などをご紹介。

1. 理想的な電源の設置環境

電源機器を永くご使用いただくには、「設置環境への配慮」や「定期的なお手入れ」が大切です。何気なく使用している電源が気づかないうちにストレスにさらされ、時間の経過につれて、性能に影響が生じます。設置環境を工夫し、理想的な環境に近づけることで、機器へのストレスを抑えることができます。

  • 吸気・排気に十分なスペースが確保されている
  • 電源周囲の温度や湿度が適切に保たれている
  • ちり・ほこりが少ない など
理想的な電源の設置環境

2. 設置場所について

電源機器を長持ちさせる上で設置場所は重要です。電源機器を設置する際は、可能な限り周囲に空間を確保しましょう。

【機器へのストレスとなる例】

(1) 壁面と電源機器が近すぎる

電源機器の排気口で熱がこもる。通気性を確保できず、電源内部が過熱状態に。

壁面から通気口までは1m程度のスペースを確保するのが理想的です。

機器へのストレスとなる例(壁面と電源機器が近すぎる)
(2) 吸気口の前面に熱を出す機器(トランスなど)を置いている

電源機器の吸気温度が上昇。内部回路が常時高温にさらされ性能や寿命に影響。

高温になりやすい機器を使用する場合は、電源機器から離しておくか電源機器の側面など通気性に影響が少ない場所に配置しましょう。

機器へのストレスとなる例(吸気口の前面に熱を出す機器を置いている)

3. 周囲温度や湿度について

周囲温度や湿度の変化が、電源機器のストレスに繋がる場合があります。

機器へのストレスとなる例

(1) 室温が高すぎる

電源機器の吸気温度が上昇。長時間使用すると内部温度が上昇する可能性あり。

できる限り、25℃前後に室温を保つのが理想的です。

機器へのストレスとなる例(室温が高すぎる)
(2) 結露が発生する

急激な温度や湿度の変化により、電源内部に結露が発生。内部回路がショートする危険性あり。

結露が発生した場合は、結露状態が解消されるまで十分な時間、室温で放置した上で使用してください。

機器へのストレスとなる例(結露が発生する)
結露が発生しやすい環境の例
  • 夏場:エアコンの効いた涼しい部屋から、廊下などの暑い場所を経由して電源を移動する
  • 梅雨時:雨の影響で室内の湿度が急激に高くなる

4. 定期的なお手入れについて

電源機器を長期間、状態よくご使用いただくために、定期的なクリーニングをおすすめします。

ユーザで実施できる日常のお手入れ

設置環境によって異なりますが「1ヶ月に1回程度」を目安に、電源のエアフィルタをクリーニングしましょう。
ちり・ほこりの目詰まりが、電源のストレスとなる可能性があります。

エアフィルタが目詰まりする例
ケース1) 機器の清掃を長期間行っていない

ちりやほこりがエアフィルタに付着。通気口を塞いでしまう。

ケース2) 湿気が多い場所で使用している

結露によって付着した汚れがエアフィルタ上にこびり付く。

エアフィルタが目詰まりする例
エアフィルタのクリーニング方法について

エアフィルタを取り外し、水洗いで付着した汚れを良く取り除きます。エアフィルタを完全に乾燥させてから、再度電源に装着します。

エアフィルタの取り外し方法は、機種により異なります。詳細は、製品添付の取扱説明書をご参照ください。

内部清掃のすすめ

設置環境により異なりますが、「半年に1回程度」を目安に、電源内部の清掃実施をお勧めします。
ちり・ほこりなどが電源内部に侵入、付着することで最悪の場合、内部回路に影響を及ぼすことがあります。
電源内部の清掃につきましては、お問い合せください。

電源電圧について

電源電圧について

国内および海外の電源電圧/標準電圧の規格や電源ラインのトラブル事例などをご紹介。

1. 海外の電源電圧

海外向け製品を開発する際には、対象とする国や地域にあった電源電圧にて試験する必要があります。電圧や周波数を自在に可変できる交流電源を用いて、各種試験を実施します。
また、試験電源への要求仕様が定められている場合は、その内容を確認しておくことも大事です。

電源電圧規格の例

  • IEC規格 IEC 60038 [ IEC standard voltages ]
  • EN規格 EN 50160 [ Power Quality Standard ]
  • アメリカ規格 ANSI C84.1 [ For Electric Power Systems and Equipment ]

EU圏内においては、規格をベースに加盟国間の安全性や利便性を考慮して電源電圧の統一化が進んでいます。

例えば・・・

  • イギリス 単相240V、三相415V
  • スペイン 単相127V/220V 三相380V
  • ノルウェー 単相220V/230V 三相380V

→単相230V、三相400Vに電源電圧を統一化

その一方で、同じ国内であっても個別の都市や地域などで、異なる電圧や周波数が使用されている場合もあります。身近な例として、日本では「東日本」と「西日本」で周波数が50Hzと60Hzに分かれています。

海外では、日本と比べ電力品質に差が有る場合も多いので、リスク低減のため、定格の試験だけでなく、より厳しい環境を想定して試験を実施することをお勧めします。

各国における電源電圧の例

地域 国名 周波数 電源電圧
単相 三相
アジア インド 50Hz 230V/240V 4線 400V/415V
インドネシア 50Hz 200V 4線 380V
韓国 60Hz 110V/220V
3線 200V
4線 380V
シンガポール 50Hz 230V 4線 400V
タイ 50Hz 220V 4線 380V
台湾 60Hz 110V/220V 4線 380V
中国 50Hz 220V 4線 380
日本 50Hz/60Hz 100V/200V
3線 200V
3線 200V
フィリピン 60Hz 220V/230V/240V 4線 480V
ベトナム 50Hz 220V 4線 380V
香港 50Hz 200V/220V 4線 346V/380V
マレーシア 50Hz 240V 4線 415V
オセアニア オーストラリア 50Hz 230V  4線 400V
ニュージーランド 50Hz 230V/240V 4線 400V/415V
北米 アメリカ 60Hz 120V/208V/240V/277V
3線 240V
4線 208V/240V/480V
カナダ 60Hz 120V
3線 240V
3線 240V/480V
4線 208V/600V
ヨーロッパ イギリス 50Hz 230V 4線 400V
イタリア 50Hz 230V 4線 400V
オランダ 50Hz 230V 3線 400V
オーストリア 50Hz 230V 4線 400V
スイス 50Hz 230V 4線 400V
スウェーデン 50Hz 230V 4線 400V
スペイン 50Hz 230V 4線 400V
ドイツ 50Hz 230V 4線 400V
チェコ 50Hz 230V 4線 400V
ノルウェー 50Hz 230V 3線 400V
フィンランド 50Hz 230V 4線 400V
フランス 50Hz 230V 4線 400V
ベルギー 50Hz 230V 4線 400V
ポルトガル 50Hz 230V 4線 400V

都市や地域などにより上記以外の電圧や配線方式が採用されている場合があります。

2. 日本の電源電圧

日本の電流電圧は、電圧100V、200Vが主流です。特に電圧100V系を採用している国は世界的に見て少数派です。また、周波数は「東日本」と「西日本」で異なります。
そのため、国内向けの製品を開発する際にも、試験用交流電源を用いて各種試験を実施する必要があります。

国内の代表的な電圧・周波数

電源電圧
単相 三相
100V 200V 3線式 200V 3線式 200V

三相3線式 400Vや三相4線式 200Vなどの電圧が使用されている場合があります。

電源周波数
  • 東日本  50Hz
  • 西日本  60Hz

周波数の境界線は新潟県 糸魚川市から静岡県富士川を南北で結んだ線

一部 50Hz/60Hzが混在する地域もあります

周波数の境界線
図1 周波数の境界線

日本の標準電圧規格

日本国内の標準電圧規格はJEC-0222により定められています。

規格には、「公称電圧1000V超での公称電圧」と「公称電圧1000V以下の公称電圧」の規定があります。

[表1]は、1000V以下の公称電圧の一覧です。

「1000V以下」の公称電圧の改定は、1964年、1970年、2002年と3回行われており、国内の配電設備技術の向上やIEC 60038との整合化などを考慮して規格の更新が実施されています。

表1 JEC-0222-2009
公称電圧が1000V以下の電路線の公称電圧
公称電圧 V
100
200
100/200
230
400
230/400

3. 電源ラインのトラブルと解決方法

電源ライン、実は不安定?

日本の電力品質は、世界的に見てもトップレベルです。実際の使用においては、同じ電源ラインで様々な電気・電子機器が電力を共有しているケースが多く見られます。最も身近な例は、テーブルタップを使用したタコ足配線です。
このように多数の機器が同時に動作している環境では、供給される電圧が不安定になったり、電圧波形がひずんだりする場合があります。

電圧波形のひずみについて

電源ラインの電圧波形のひずみは、テスタなどで測定しても発見が難しく、トラブルの原因となる可能性があります。

よくある電源電圧波形の変化
フラットカーブ波形

電圧のピークが潰れたように見える波形

フラットカーブ波形
【発生する条件】
  • 電圧ピーク付近で電流が流れる
  • 同じ系統に多数の機器が繋がっている
  • モータなど突入電流の大きな機器を使用中

機器の動作が不安定になる可能性があります。

オーバースイング波形

高調波により電圧にひずみが発生した波形

オーバースイング波形
【発生する条件】
  • 高調波電流による影響
  • 負荷からの高周波成分の影響

電子機器の共振や誤動作が起こる可能性があります。

上記のような電源波形は、精密な測定を伴う施設や設備では、機器の動作のみならず測定結果に影響が出ることもあります。トラブルを未然に防ぐため、交流安定化電源を使用し、電源環境を改善することをおすすめします。

電源環境改善によるSTM(走査型トンネル顕微鏡)の画質改善の例

写真は、一辺200ナノメートル。空気中で保存しておいた金(Au)の表面に吸着物がある画像です。
安定化電源を使用し、電源ラインから絶縁することで画像のノイズが消え、画質が改善されたのが判ります。

安定化電源 使用前
安定化電源 使用前
画像にノイズがのっている
安定化電源 使用後
安定化電源 使用後
画像からノイズが消えている

ノイズの要因は電源ラインのみとは限らないため、必ず画質が向上するものではありません。

低ノイズ・低ひずみの交流安定化電源

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