共振点追尾PLL回路のループ・ゲイン特性の改善
測定対象と背景
測定対象は、ボルト締めランジュバン型振動子(BLT)を駆動する共振点追尾発振器内の共振点追尾PLL回路です。
このPLL回路では、共振周波数においてBLTの電圧と電流の間の位相差が0°となるよう(位相差を0°に維持するため)、発振周波数を制御します。
この回路でBLTを駆動したところ、機械的負荷が加わった状態では共振周波数にロックするものの、無負荷状態ではロックできない(VCO周波数が収束しない)BLTが見つかりました。
駆動時に制御ループの安定性が確保されていない可能性があるため、FRAでループ一巡特性を測定して確認することにしました。
周波数特性分析器(FRA)による実機評価
FRAを用いて実機のループ・ゲイン特性を測定します。
測定方法
- ループフィルタとVCO(電圧制御発振器)の間に注入抵抗(100Ω程度)を入れ、FRAでループ一巡特性を測定します。
- 無負荷では制御ループが発振(VCO周波数が発散、収束しない)して測定できないため、このBLTに機械的負荷を加えてQ(品質係数、共振の鋭さ)を小さくし、共振点ロック状態にして測定します。
- 今回の回路では、ループフィルタはオペアンプを使ったアクティブフィルタ型なので、FRAをそのまま接続できます。ループフィルタがCR型で回路のインピーダンスが高い場合は、シグナルインジェクタプローブ5055を使う必要があります。

測定結果
測定した結果は以下の通りです。
この状態では位相余裕は約40°あり、概ね確保されています。ゲイン(赤)は20Hz付近から-40dB/decで減衰、100Hz付近で位相はほぼ0°となっています。
機械的負荷が軽い時にはQが大きく、ゲイン特性全体が持ち上がります。クロスオーバ周波数が100Hzに近づくにつれて、位相余裕が失われる(減少する)ことが予想されます。
- BLTに機械的負荷をかけて、Qを小さくした場合の測定結果
- 位相余裕:39.93°
- クロスオーバ周波数:27.54Hz

無負荷に近づくと安定性が失われる
機械的負荷が軽くなるとQが大きくなり、位相特性は大きく変わらないままゲイン特性全体が持ち上がります。クロスオーバ周波数も上昇し、位相余裕が減少します。
機械的負荷 大、Q 小さい

位相余裕 十分
機械的負荷 なし、Q 大きい

位相余裕 不十分
改善策
現状ではループフィルタの位相補償が不十分なので、フィルタ特性の見直しやラグリード時定数の再調整を行いました。
改善後の測定結果
- 位相余裕:51.99°
- クロスオーバ周波数:27.54Hz
- 位相余裕も改善され、位相特性は45°あたりを底に再び増加。制御安定性が改善

ポイント
測定したループ・ゲイン特性をもとにして、共振点追尾PLL回路の安定性を改善できました。
実際にこのBLTでは機械的負荷が無くても正常に共振点ロックができるようになりました。
ループ・ゲイン測定の詳細については、技術資料「周波数特性測定によるスイッチング電源の安定性評価」を御覧ください。