電流源

定電圧電源と定電流電源

定電圧電源と定電流電源

直流電源は負荷(対象物)に電力を供給しますが、電力一定ではなく、電圧もしくは電流どちらかを一定にして電力を供給します。一定の電圧を加える定電圧電源(電圧駆動)と、一定の電流を加える定電流電源(電流駆動)があり、それぞれ直流電源のCV(Constant Voltage)モードとCC(Constant Current)モードに対応します。

1. 定電圧電源(CVモード)

負荷に一定の電圧を供給する方式でICや多くの回路で使用されます。この方式では、負荷のインピーダンス(V-I特性)によって流れる電流が決まります。
設定する電圧をVset、負荷のインピーダンスをZとすると、流れる電流Iload

(1)

流れる電流=設定電圧÷負荷インピーダンス

と表せます。定電圧電源は供給可能な最大電流(Imax)が決まっているので、式(1)でImax < Iloadとなる負荷のインピーダンスZだと、電流値がImaxで制限されます。このとき、負荷に印加される電圧は

(2)

負荷に印加される電圧=最大電流×負荷のインピーダンス

となります。

回路図と関係式のグラフ

2. 定電流電源(CCモード)

負荷に一定の電流を供給する方式でV-I特性が線形ではないダイオードやLEDの駆動に使用されます。この方式では負荷のインピーダンスによって負荷にかかる電圧が決まります。
設定した電流をIset、負荷のインピーダンスをZとすると、負荷にかかる電圧Vload

(3)

負荷にかかる電圧=負荷のインピーダンス×設定した電流

と表せます。定電流電源は供給可能な最大電圧(Vmax)が決まっているので、式(3)でVmax < Vloadとなる負荷インピーダンスZだと、電圧値がVmaxで制限されます。このとき負荷に印加される電流は

(4)

負荷に印加される電流=最大電圧÷負荷のインピーダンス

となります。

回路図と関係式のグラフ

3. 電流駆動のメリット

LEDなどのダイオード特性を持つデバイスでは、電圧に対して電流が指数的に変化します。また、LEDで消費される電力は、印加された電圧と流れる電流の積で決まります。
先ず、LEDを電圧駆動した場合には、電圧が少し変わると電流が指数的に変化するので、消費電力(=発光度合)は指数的に大きく変化してしまいます。
一方で、電流駆動した場合には、電流が少し変わったとしても電圧は対数的にしか変化しないので、消費電力(=発光度合)は対数的に小さくしか変化しません。
このため、LEDは電流駆動の方が適しており、安定に発光させることができます。

エヌエフの電圧電流変換モジュール

エヌエフの電圧電流変換モジュール

1. 電圧電流変換モジュール

電圧電流変換モジュールとは、入力電圧に比例した電流を出力する機器です。
信号発生器や電圧源などと一緒に用いると電流源として使用することができます。エヌエフの電圧電流変換モジュールは、変換利得によって、三機種をラインナップしています。

型名 VI-206F1 VI-207F1 VI-309F1
最大出力電流 ±100µA以上 ±1mA以上 ±50mA以上
変換利得 100µA/V 1mA/V 5mA/V,50µA/V
出力雑音電流 10nArms以下 100nArms以下 1µArms以下
出力クランプ電圧 約±11V 約±4V
周波数特性 DC~7kHz以上 DC~10kHz以上
入力電圧範囲 ±1V ±10V

負荷抵抗1Ω時

VI-206F1・VI-207F1はそれぞれ変換利得が100µA/V、1mA/Vで、入力に1Vを印加するとそれぞれ100µA、1mAの出力が得られ、微小電流源として使用可能です。
VI-309F1は変換利得の異なる二つの入力端子を持ち、出力電流は二つの入力に印加された電圧によって生じる電流の合計が出力されます。変換利得はそれぞれ5mA/Vと50µA/Vです。

VI-206F1は7kHz以上、VI-207F1とVI-309F1は10kHz以上の帯域を持っているので、入力信号として正弦波を印加すると、正弦波の出力電流を供給することが可能です。例えばVI-309F1の変換利得5mA/Vの入力に1VのDC電圧を、変換利得50µA/Vの入力に1V振幅、10kHzの正弦波を印加すると、5mAのオフセットを持った50µA振幅の10kHzの正弦波が出力されます。

また、出力端子の電圧を確認できる出力電圧モニタ端子も搭載しています。マルチメータやオシロスコープを接続することで、電流を印加した負荷にかかる電圧を測定することができます。

2. 実測例

エヌエフの電圧電流変換モジュールVI-309F1を使用し、あるDC値(オフセット)の電流に正弦波や矩形波を重畳する方法

一つ目は正弦波の例です。5mA/Vの入力にDC1Vを、50μA/Vの入力に1Vpp/10kHzの正弦波電圧を印加した時のVI-309F1の出力波形を図1に示します。負荷抵抗として100ΩをVI-309F1の出力につないでいます。Ch1(図1 上側の波形)はオシロスコープの入力をAC結合にした測定結果、Ch2(図1 下側の波形)はオシロスコープの入力をDC結合にした測定結果です。

Ch1:オシロスコープの入力をAC結合にした測定結果
Ch2:オシロスコープの入力をDC結合にした測定結果
図1

Ch1の波形から、5mVppの正弦波が測定されます。負荷抵抗が100Ωですので、50μAppの正弦波形の電流が出力されていることが分かります。Ch2の波形はDC値として500mV、つまり5mAのDC電流が出力されていることが分かります。これらのことから、5mAのDC電流に50μAppの正弦波電流が重畳されていることが分かります。

二つ目は矩形波の例です。5mA/Vの入力にDC6Vを、50μA/Vの入力に10Vpp、1kHzの矩形波電圧を印加した時のVI-309F1の出力波形を図2に示します。負荷抵抗は同様に100Ω、オシロスコープの入力もCh1(図2 上側の波形)がAC結合、Ch2(図2 下側の波形)がDC結合です。

Ch1:AC結合
Ch2:DC結合
図2

Ch1の波形から、50mVppの矩形波が測定されます。負荷抵抗が100Ωなので、500μAppの矩形波形の電流が出力されていることが分かります。Ch2の波形はDC値として3V、つまり30mAのDC電流が出力されていることが分かります。これらのことから、30mAのDC電流に500μAppの矩形波電流が重畳されていることが分かります。

これらの測定結果のように、VI-309F1を使うと、オフセットを持った正弦波形・矩形波形の電流を簡単に出力することができます。


VI-309F1とA社直流電源の比較

VI-309F1と、A社直流電源のCCモードの雑音を測定した結果を紹介いたします(図3)。出力電流は直流10mAで、負荷として100Ωの抵抗を駆動し、出力電圧が1Vとなる状態での雑音を測定しています。電圧電流変換モジュールVI-309F1は変換利得の異なる二つの入力端子を持っており、ここでは5mA/Vの入力に2Vを印加することで、出力電流が10mAになるように制御しています。入力電圧は、ファンクションジェネレータと低雑音直流電源を用いて印加しました。

VI-309F1とA社直流電源のCCモードの雑音を測定した結果
図3

VI-309F1(入力信号源:低雑音電源)とA社直流電源を比較すると、VI-309F1を使用した方が、どの周波数でも雑音が優れていることがわかります。

VI-309F1の出力に現れる雑音は、VI-309F1自身の雑音成分と、入力信号の雑音成分があります。入力信号の雑音は,出力電流に変換されるためです。VI-309F1の入力信号源によって差が生じているのがわかります。特に低い周波数での雑音が大きく違います。これは、ファンクションジェネレータと低雑音電源の雑音の差によるものです。今回のように、直流電流を出力する場合は、ファンクションジェネレータを入力信号源とするよりも、エヌエフの低雑音電源を入力信号源とする方が雑音を小さくすることができることがわかります。駆動方式に依らず100kHz付近から雑音が等しくなっているのは、VI-309F1の帯域外なので、入力信号による雑音が小さくなりVI-309F1の雑音が見えているからです。

続いて、長時間安定度を測定しました(図4)。低雑音電源を入力信号源としたVI-309F1とA社直流電源それぞれ10mAを出力させ、100Ωの抵抗を負荷として、1Vを出力した時の出力電圧を測定しました。測定開始時の値からの電流変動をプロットしています。

長時間安定度比較
図4

7時間の測定を行い、VI-309F1は変動が約10ppm、A社直流電源は約30ppmの変動が観測されました。時間による出力の変動が十分小さいことがわかります。

3. アプリケーション例

レーザダイオード(LD)やLED駆動電流源として

デモ動画: 低雑音電流源によるレーザダイオードのS/N比改善

レーザダイオード(LD)は光通信や光を用いた測距、分析装置など幅広い用途で使用されます。レーザダイオードの品質は、年々向上する傾向にあり高品質なレーザ光が得られるようになってきていますが、レーザダイオード自体の性能が良いだけでは安定した雑音の少ない光を出力できるとは限りません。

一般的なレーザダイオードの多くは定電流駆動であり、多くの場合、電流値の可変機能や変調信号を重畳する機能を備えた市販のLDドライバが使用されます。このLDドライバの雑音性能や安定性は出力されるレーザ光の品質に大きく影響しますので、低雑音な定電流源を用いる必要があります。

さて、実際にLDドライバの性能がレーザ光の品質にどの程度影響するのかを、図1に示す測定系において評価しました。図1の左端に示す定電流源として、市販の一般的なLDドライバ(LDメーカの提供する専用の駆動源)を使用した場合と、当社LP6016-01とVI-309F1を組み合わせて定電流源として使用した場合とで比較しています。

評価時の測定系
図1. 評価時の測定系

結果は図2~3に示す通り、一般的なLDドライバを用いた時と当社LP6016-01とVI-309F1を使用した時では、信号対雑音比(S/N比)がおよそ5倍以上違うことが分ります。

また図4に示す通り、スペクトルで見ると広帯域に渡って雑音が約10倍(20dB)違うことが分ります。

このように、同じレーザダイオードを用いたとしても駆動する電流源の性能によって、出力に大きな差が生じます。より高品質なレーザ光を得るには、電流源の性能に気を付ける必要があることが分ります。

波形比較(リアルタイム)
図2. 波形比較(リアルタイム)
波形比較(平均化16回)
図3. 波形比較(平均化16回)
スペクトル比較
図4. スペクトル比較
Point

当社LP6016-01とVI-309F1を組み合わせて定電流源として使用した場合、設定分解能は25nAまたは2.5μAです。
LP6016-01の出力電圧分解能: 500μV
VI-309F1の電圧電流変換係数: 5mA/Vまたは50μA/V

光センサ(フォトダイオード)の雑音改善例はこちら

電気・油圧サーボ弁の制御電流源として

油圧サーボ弁の一部の製品は、電流で制御を行います。VI-309F1の最大出力電流は±50mAで両極性の電流を出力可能なので、幅広い油圧サーボ弁の制御に使用できます。

HILSの電流出力センサのモデルとして

HILSで使われる電流出力センサを模擬するために、エヌエフの電圧電流変換モジュールが使用できます。変換利得の異なる三機種(100µA/V,1mA/V,50mA/V)をラインナップしていますので、センサの仕様によって選ぶことが可能です。

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