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技術情報:計測講座 

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    部品や回路を通過する際に発生するひずみの計測(THD測定)

 

     1. ひずみ測定系のひずみ

発振器・スペクトラムアナライザのひずみ

図2 ひずみ測定系

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図2にTHDの測定系を示しました。現実にはこのひずみ測定系もひずみを発生します。具体的には、発振器のひずみやスペクトラムアナライザのひずみによって引き起こされます。
1MHzを超える周波数での発振器の出力は質が良いといわれる場合でも-60dBc程度です。また、スペクトラムアナライザのTHDは-90dBc程度が一般的です。DUTのTHDとして-60dBcより優れている場合には高価な設備を選定しても、図2の方法では測定することが難しいです。

 

     2. フィルタを用いた測定

バンドパスフィルタ(BPF)とバンドエリミネーションフィルタ(BEF)によるひずみ測定方法

発振器の出力に含まれる高調波は,ローパスフィルタ(以下、LPF)やバンドパスフィルタ(以下、BPF)を用いることで除去できます。特にBPFを用いると、低周波でのノイズなども除去できます。また、スペクトラムアナライザのひずみは、入力する基本波成分を小さくすることで,スペクトラムアナライザの高調波を減らすことができます。バンドエリミネーションフィルタ(以下、BEF)を用いることで,基本波成分を小さくすることができます。
これらのフィルタを用いたひずみ測定系を図3に示します。

 

図3 BPF・BEFを用いたひずみ測定系

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BPFにより、発振器の出力に生じていた高調波成分を取り除くことで、DUTに印加される信号のTHDをDUTのTHD以下にしています。また、BEFにより、基本波成分を小さくします。これにより、スペクトラムアナライザに印加される基本波成分が小さくなるため、スペクトラムアナライザ自身のひずみを抑えることができます。この測定系で発振器とスペクトラムアナライザのひずみの影響を抑えて、高調波成分を測定することができます。また、BEFをバイパスすることで,基本波成分を測定します。これらの測定で、-60dBcを超えるようなTHDを測定することが可能になります。具体的には1MHzを超えるような状況で使われる部品や回路の設計や選定の際に使用するのに適しています。
BPFとBEFを測定系に加えることで、測定できるTHDの範囲を広くすることができますが、実際のBPFやBEF自身にもひずみがあることを忘れてはいけません。

 

中心周波数が1MHzを超えるようなフィルタですので、アクティブフィルタを使用することは難しい周波数帯域になります。パッシブフィルタを構成する際に使用する抵抗やコンデンサ、インダクタですが、-100dBcを超えるようなTHDの測定のためには、これらのひずみが影響してきます。特にインダクタは、抵抗やコンデンサに比べて大きなひずみ特性を持つ傾向があります。使用している磁性体が飽和するためで、透磁率の大きい磁性体ほどひずみを発生しやすい特徴を有しています。このため、BPFやBEFは質の高いものを選ぶことが大切です。

 

 

     3. 高品質BPF・BEF

低ひずみバンドパスフィルタAs-907、低ひずみバンドエリミネーションフィルタAs-915

1MHz以上のTHDを正確に測定するために開発されたのが、低ひずみバンドパスフィルタAs-907と低ひずみバンドエリミネーションフィルタAs-915です。
どちらも中心周波数が1MHz,2MHz,3MHz,5MHz,10MHz,20MHzのラインナップで、30MHz以上100MHzまで特注品として製造可能です。

 

▲As-907

 

▲As-915

 

バンドパスフィルタのAs-907は2次高調波での減衰量が96dBc以上、3次高調波の減衰量が110dBc以上あります。また、2次、3次のひずみ率が-120dBc以上あります。
一方、バンドパスフィルタのAs-915は基本波の減衰量が110dB以上あります。
As-907とAs-915を図3に示した測定系で使用することで、-120dBcまでのTHD測定が可能になります。

 

 

デモ機の貸出しも行っておりますので、お試しされたい方はこちらからお問合せください。

 

     4. ひずみ率の測定例
As-907とAs-915を用いて、今まで測れなかった-120dBcまでのひずみ率が測定できます。-120dBcから-20dBcのような幅広い範囲で、部品の正確なひずみ特性が得られることにより、製品開発における部品の選定や、電圧・電流の設定をより適切に行えます。また、As-915を使用すると、発振器の基本波成分を除去し、高調波成分のみを通過させることができるため、発振器の高調波成分を測定することができます。ひずみの確認を行う際に、実は発振器のひずみが問題になっていたなどの問題がないかを確認することができます。

チップインダクタのひずみ測定と、発振器のひずみ測定を下記に例としてご紹介します。

 

チップインダクタのひずみ測定

測定周波数1MHzで1µH,10µH,100µHのチップインダクタの2次と3次のひずみ率を測定した結果を図4に示します。

 

図4 1µH,10µH,100µHのひずみ測定結果

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インダクタンスが大きいものほど、ひずみが大きくなることがわかります。また、インダクタに印加する電流が大きくなると、ひずみも大きくなることがわかります。このように、実際に部品を使用する条件でどの程度のひずみが発生するのかを調べておくことは、安定した回路を実現するうえで非常に重要です。

次に製造メーカの異なる1µHのチップインダクタ3種のひずみ率を測定した結果を図5に示します。

 

図5 1µHチップインダクタひずみ測定

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どのサンプルのひずみも、-60dBcより小さいため、測定することが非常に難しいです。特にサンプルCの2次ひずみは、大きな電流を流した場合を除き、-120dBcより優れており、今回の測定系での測定限界の-120dBcを超えています。対して3次ひずみは今回測定したサンプルの中では一番大きな3次ひずみとなっています。2次ひずみは気になり3次ひずみは気にならない用途ではとてもいい特性となります。
サンプルAはサンプルB、Cと特性が異なり、2次ひずみが3次ひずみよりも大きいことがわかります。サンプルBを使用していた回路で、サンプルAに部品を交換すると、3次ひずみが抑えられますが、2次ひずみが大きく出てしまうことになります。
サンプルによって特性が異なることがよくわかります。こういった部品ごとのひずみ特性を知ることで、設計時に部品を選ぶ一つの指標となります。

今回はチップインダクタのひずみを測定しましたが、たとえばコンデンサのひずみなどを知っておくことも重要です。一般的にフィルムコンデンサのほうが積層セラミックコンデンサよりもひずみが小さいと言われています。コンデンサの種類によるひずみの違いもAs-907とAs-915を使って測定することができます。

 

発振器のひずみ測定

発振器(ファンクションジェネレータ)を使って、周波数1MHz、振幅1Vppの正弦波を出力させたときの2次と3次のひずみ率を測定しました。測定結果を表1に示します。

 

表1 発振器のひずみ特性

  2次ひずみ[dBc] 3次ひずみ[dBc]
サンプル1 −61.5   −60.0  
サンプル2 −79.6   −64.9  
サンプル3 −84.0   −82.8  
サンプル4 −40.6   −40.8  

 

発振器によってひずみ率が大きく異なることがわかります。発振器によって信号を作る際に、発振器によるひずみが問題になる可能性があることがわかります。As-915を用いると発振器のひずみを測定することができます。測定系のブロック図を図6に示します。

 

図6 As-915による発振器のひずみ測定

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低ひずみバンドパスフィルタ As-907

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  • 出力は周波数に関係なく50Ωの純抵抗
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  • 最大入力電圧 5Vrms
  • 20ビットのA/Dコンバータの評価にも対応できる低ひずみ率
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低ひずみバンドエリミネーションフィルタ As-915

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  • 中心周波数別に6タイプ(1MHz, 2MHz, 3MHz, 5MHz, 10MHz, 20MHz)をラインナップ
  • foにおける減衰量100dB以上
  • 入力インピーダンスは、周波数に影響されない安定した50Ω(低VSWR)
  • 最大入力電圧 5Vrms
  • As-907(低ひずみバンドパスフィルタ)と併用して高精度な高調波ひずみ測定が可能  
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